はじめての方へ

家を売る[前編]

マイホームの売却をされる方のほとんどは「出来るだけ早く」「出来るだけ高く」売りたいと思う方が多いと思います。
しかし、不動産の売却は人生の中で何度も経験することではありません。
希望額で売れるか、査定額が適正かなど、実際に売却した人の声を聞くと、そのほとんどがお金にまつわることで不安を感じたと回答しています。
そのような不安を和らげるため、売却に関する基礎知識や流れを知ることで、円滑な売却を行うことが出来ます。

マイホーム売却の流れ

  1. STEP1

    売却計画

    売却する目的や理由を整理し、どれくらいの金額で売却したいかなどの条件を整理し、相場や税金を出来る範囲で調べます。

  2. STEP2

    専門家に相談

    不動産会社に相談し、物件の市場流通性などの情報を元に売却計画を見直し、査定依頼をする会社を選択します。

  3. STEP3

    査定依頼

    不動産会社に売却希望条件を伝え、必要な書類を提出して正式な査定を依頼し、売却判断と売出価格などを検討します。

  4. STEP4

    媒介契約の締結

    不動産会社に仲介してもらう方式(専属専任媒介・専任媒介・一般媒介)を決め、仲介手数料・支払い方法を決定し、契約を締結します。

  5. STEP5

    販売活動

    仲介業者が販売活動を開始します。販売方法は業者に委ねられ、特殊な広告でない場合、広告費などは仲介業者が負担します。

  6. STEP6

    申込みと承諾

    購入希望者が現れた時、希望金額・手付金額・契約希望・引渡希望日が記載された購入申込書を受け取り、承諾するかを返答します。

  7. STEP7

    契約の交渉

    仲介業者は売主と買主の契約条件の調整を行って成立のために尽力します。合意した場合、売買契約書を確認します。

  8. STEP8

    契約の締結

    契約を締結して手付金を受け取ります。条件変更を希望する場合は仲介業者に伝えて再度調整します。

  9. STEP9

    決済・引き渡し

    司法書士が登記関係書類を作成し、買主が残金全額を支払うと同時に、土地・建物を引き渡します。

マイホームを売却する前に

事前準備

売却計画を立てる

公簿売買と実測売買

マイホーム売却には目的や理由があるはずです。買い換え、資産整理、相続のためなど、目的・理由によって、売却の条件が変わってきます。
買い換えの場合は物件購入資金として、相続の場合は財産分配を目的として、売却希望額や期限に制限がかかってきます。

目的ごとのポイント

  • 購入物件の資金=売却資金+借入残債
  • 売却・購入にかかる仲介手数料や諸経費の計算が出来ているか
  • 最低売却価格をどうするか
  • 遺産分割協議が完了しているか
  • 相続人全員が売却計画に同意しているか
  • 売却代金・分配方法などに同意しているか
※一人でも同意していない相続人がいる場合は計画を進められません。

2つの売買方法

実際の土地面積ではなく、登記上の土地面積で売買する方法 ①契約締結までに行った実測面積によって売買する方法
②契約時は登記上の概算面積で、決済までに実測して売買方法

契約不適合責任

建物が経年劣化で品質・性能が低下するのは当然です。
また、シロアリの害・雨漏り・結露などによる腐食・不同沈下による傾きなどの欠陥が引き渡し後に発覚するとトラブルになることが少なくありません。
土地・建物に欠陥があった場合、売主が契約不適合責任を負わなくてはならなくなり、補修・減額が必要となります。
知っている不具合を告知することが大事ですが、建物情報調査などで、事前にトラブル防止施策を検討してみましょう。

物件状況報告書

買主に物件状況報告書を交付・説明し、土地・建物の種類や品質などに問題や欠陥をあらかじめ報告します。
免責特約をつけることで、「欠陥があっても責任を負わない」とすることも可能ですが、知っていて告げなかった欠陥については免責されます。

建物状況調査

第三者機関による建物検査を行い、中古住宅の瑕疵に対する購入者の不安を払拭するために、既存住宅状況調査技術者による建物検査を行い、報告書を作成することで、瑕疵保険基準に適合する建物として売却することが出来ます。

売却するためのパートナー探し

不動産会社の選び方

不動産の専門家に相談する

不動産会社への訪問

安全な取引を行うためには不動産会社の力は欠かせません。
まずはじめに知りたいのは、売却見込み価格や、売却の見通しかと思います。アドバイスを受けるために必要な情報を下記にまとめました。

物件情報 所在・建物図面・写真・測量図など・土地建物に関する資料・マイナス情報など
売却目的 買い換え・相続・資産整理・その他明確な理由
疑問点 売却方法・税金について・相続について・その他

マイホームの査定を依頼する

価格査定

不動産会社は、机上の概算価格を算出する簡易査定も行いますが、売却を進める場合は実際の「売却見込み価格」を算出する訪問査定が必要です。
鑑定評価基準に基づいた鑑定評価は高額で、より安価な不動産調査報告書による評価もあります。

不動産価格査定書 不動産調査報告書 不動産鑑定評価書
  • 売却見込み価格を概算する
  • サービスの一環として通常は無料
  • 公的機関への提出を前提としていない
  • 不動産鑑定評価基準に基づかない簡易査定
  • 簡易査定であるため安価
  • 公的な不動産価格の算定には使用不可
  • 不動産鑑定評価基準に基づいて作成
  • 不動産鑑定士が行うため高価
  • 公的証明書として利用出来る

ウェブサイトの無料査定は慎重に

仲介業務が中心の不動産会社は、売却予定の売主と購入予定の買主の情報を収集することが最も重要な仕事になります。
売却情報収集のために様々な営業活動をしており、ウェブサイトで無料査定を申し込むお客様は有望な見込み客となりますので、工夫を凝らして無料査定の申込みに誘導してきます。しかし査定依頼は個人情報提供であることに注意してください。
無料査定を行っている会社は、顧客情報を売却するだけの会社かも知れません。顔が見えないウェブサイトでの査定は慎重に行いましょう。

査定依頼から売出価格決定までの流れ

  1. 査定の依頼
  2. 対象不動産の調査
  3. 不動産会社による査定
  4. 査定結果の報告・売出価格の提案
  5. 売出価格の決定

現地調査におけるポイント

土地・戸建て
敷地形状形状・大きさ・擁壁の有無・法地など
敷地境界隣地との境界・境界標の有無など
敷地内状況物置・境界塀・樹木・古井戸など
接道幅員接道の長さ・前面道路の幅員など
近隣関係周辺の建物・境界の有無・高圧線の存在など
ライフライン上下水道・ガス・浄化槽など
建物状況綺麗さ・日当たり・増改築・建物の傾きなど
管理状況整理整頓・設備の破損・修繕の状況など
使用状況居住中か空き家か・賃貸住居・駐車場利用など
騒音臭気騒音・臭い・揺れなど
マンション 専有部分
眺望景観眺望景観・前面道路の規模
室内状況綺麗さ・日当たり・湿気・リフォームの有無
設備状況設備の有無・破損修繕の状況
近隣関係上下左右の部屋との関係
騒音臭気騒音・臭い・揺れなど
マンション 共有部分
管理状況整理整頓・管理会社名と連絡先・管理人など
共用施設共用施設の有無・使用状況など
駐車・駐輪場駐車場や駐輪場の有無・利用形態(機械式/自走式)など

不動産会社に仲介を依頼する

媒介契約

マイホーム売却依頼にあたって不動産会社との間で取り交わす契約が媒介契約です。
契約は3種類あり、どの契約を選ぶかは依頼者が決定します。一般媒介契約が複数社に仲介してもらえるので良さそうに感じますが、レインズへの登録義務がないため、返って成約までに時間がかかることもあります。

専属専任媒介契約 専任媒介契約 一般媒介契約
契約出来る
不動産会社
一社のみ 一社のみ 複数社
売主が買主を
見つけた場合
仲介会社の仲介が必要 買主と直接契約可能 買主と直接契約可能
レインズへの
登録義務
仲介会社の任意
活動報告義務 1週間に1回以上 2週間に1回以上 ×
契約有効期間 3ヶ月以内 3ヶ月以内 法定上の制限なし
(行政指導は3ヶ月以内)

指定流通機構「レインズ」とは

会員となっている不動産会社が売主の依頼に基づいて不動産情報を登録し、会員間が連携して買主を探すネットワークシステムです。
不動産会社間の情報交換システムなので一般の人は情報を見れませんが、物件が登録されることで早い成約につながったり、適切な取引状況が確認出来ます。

売買代金が400万円超の仲介料の簡易計算式

仲介会社の手数料は成功報酬です。また、契約成立の有無に関わらず、特殊な広告を除き、販売活動に要した広告費などの経費を請求されることはありません。
また、仲介手数料には上限があり、宅地建物取引業法で下記の上限金額が定められており、一般的にはこの上限額を手数料とするのが通常です。

媒介契約の更新と解除

契約更新は3ヶ月以内と決まっており、仲介業者が契約期間内に売却出来なかった場合は双方の合意により更新することが出来ます。
更新契約書を作成するか、改めて媒介契約書を交わしますが、媒介契約を自動更新することは出来ません。
契約を途中で解除したい場合、それまでの販売活動に要した広告費などの経費の負担が発生することがあります。
仲介業者は費用を請求しないことも多いので、事情をしっかりと説明し、媒介契約書の契約約款を必ず読んで理解しておくことが必要です。